

ベトナム市場の魅力と参入メリット
経済成長と消費者市場:
ベトナムは近年、急速な経済成長を遂げています。2010年代以降、年平均GDP成長率は6〜7%に達し、国際通貨基金によると2050年まで、今後も高い成長が期待されています。この経済成長は、ビジネスチャンスを生み出す重要な要素です。
ベトナムの人口は約1億人と、東南アジアでも有数の規模を誇ります。特に若い世代が多く平均年齢は30歳台前半で、都市部を中心に中間層が増加しています。筆者の実感として、モノの消費意欲は日本とは比べ物にならないレベルで強いです。消費市場が拡大し、新しい製品やサービスに対する需要が高まっています。
中間所得層は2025年には人口の3割超えとなる見込みであり、3000万人(都市部に集中)の中間所得層へのアクセスが可能な市場と 言えます。
投資環境:
ベトナム政府は外国投資を積極的に誘致しており、税制優遇や投資インセンティブを提供しています。また、自由貿易協定(FTA)の締結により、貿易障壁が低くなり、ビジネス環境がさらに改善されています。 ベトナム政府は外国投資を奨励しており、税制優遇措置や特定の地域でのインセンティブを提供しています。例えば、2023年に実施された新たな投資法では、特定の高付加価値産業に対する法人税の減免が導入されました。具体的には、既に20%の法人税が、ハイテク等の一部産業で15%に引き下げられています。
労働市場: ベトナムの労働コストは、他のアジア諸国と比べても低く、製造業にとって非常に魅力的です。例えば、平均月収は約350ドル(2023年時点)であり、これは中国やタイに比べても大幅に低い水準です。加えて、労働に対して時間を惜しまないベトナム人の多くの姿勢が、参入企業にとって魅力に映ります。
インフラの整備:
ベトナム政府はインフラの改善に積極的であり、特に主要都市での投資が進んでいます。初めてホーチミン市やハノイ市を訪れる方々からすれば、ボコボコの道路を整えたり、排水を整える余地が多分にあるように感じられますが、これでも10年前とすればインフラが大いに整ってきています。ホーチミン市やハノイ市では、新しい道路や港湾、空港の建設が進んでおり、物流の利便性が向上すると同時に、活動可能な範囲が急拡大しています。

参入のリスクと課題
規制と法的環境:
ベトナムのビジネス規制や法制度は複雑であり、最新の法規制を遵守するための専門知識が求められます。例えば、労働者の解雇における実施条件や一時金の支払額につき、解釈が曖昧なところが見られます。現地の法務専門家と連携し、適切なアドバイスを受けることが重要です。
文化の違い:
ベトナムと他国のビジネス慣習や文化には大きな違いがあります。例えば、当たり前とする清潔度合いや時間へのコミット度合が異なります。現地市場に適応するためには、文化的な理解を踏まえたうえで、日本はグローバル基準に引き上げることが求められます。
インフラの制約:
特定の地域では、インフラ整備が遅れている場合があります。これにより、物流や供給チェーンに影響が出ることがあります。例えば、コールドサプライチェーンの整備は開発 途上にあるため、冷蔵・冷凍品を扱う際、現地の物流頼みでの参入にはハードル等があります。事前に現地のインフラ状況を調査し、リスクを把握することが重要です。
競争環境:
ベトナム市場では、現地企業や他の外国企業との競争が激化しています。例えば、自動車におけるティア2~のサプライヤーの品質が高まりつつあり、コスト面以外の要素も競争力がつきつつあります。ベトナムの競合状況を適切に理解のうえ、ベトナム市場をとるための仮説とその検証が重要です。

市場参入時の検討ポイント
以下に、参入時の市場調査、および、進出方法の検討・選択について詳し く記載します。
1)市場調査編
ベトナム市場に進出する際、市場調査は不可欠です。市場規模、競合状況、サプライヤへのアクセス可否、消費者ニーズなどを把握することで、戦略策定の基礎となります。
市場規模: ベトナムは公式含めた統計が限定されているか、様々な要素を拾い切れていないことにより、適切に市場を理解をすることの難易度が高いです。 一例として、ベトナム人の所得を把握したくても、インフォーマルエコノミーでの現金の授受が多かったり、裏で副業をしている人が多いといった事情で、公式統計を鵜呑みにすることは憚られます。 競合状況、サプライヤへのアクセス可否: 日本語・英語に限らずしても、ネットで取得できる情報が限られているため、デスクトップ調査には限界があります。人脈等も活用し、適切なプレイヤーにたどり着く必要があります。 例えば、日本ではネットでも購入できる医療材料をベトナムでは購入できず、煩雑な手続きと割高な価格を払ってまで日本で輸入することを検討していた企業が、実は国内で1/2の費用で対象物を現地で調達できたということがありました。
消費者ニーズ: 日本と同じ基準や価値観でベトナム消費者をはかることにリスクがあります。消費者が商品を知る過程、魅力を感じる要素、収入に対する支出の割合といった要素は日本と大いに異なります。どのような要素の影響度合いが大きいかを理解することが必須です。 一例として、価格が同様な消費財製品に対して、日本であれば環境に優しい・簡素であること(デザイン性)を優先して消費者が購入を選択していたのに対し、ベトナムは例えそれがクリアファイルのようなものであっても、オマケに魅力を感じて購入を決めるという調査結果が出たことがありました。
2)進出方法の検討・選択
ベトナムへの進出方法は大きく、自社での現地法人の設立、合弁会社の設立、M&A、代理店契約に大別できます。
現地法人の設立:
立上げの労力と引き換えに、大分部のビジネスプロセスに対して制御が利きます。ただし、ここで最重要検討ポイントの一つは、「これまで日本で成功したチームに類似した組織を、ベトナムで組成できるか」かと思います。これを実現するノウハウがあれば、良い投資対効果が見込めると思います。
合弁会社の設立、企業買収:
現地のネットワークや知識を活用できるため、リスクを分散させることができます。例えば、韓国サムスンは、金融等の領域に応じて合弁会社(JV)を適切に活用しています。最重要検討ポイントの一つは「適切なパートナーを選定するための情報にアクセスできるか」およびその後に「統合作業を適切に計画し、実行しきる体制・人員・管理サイクルが設計されているか」かと思います。上記プロセスの経験があるチームが組成できていることが必須と思います。
代理店契約: 最も金銭的なリスクは低い参入方法です。ここでの最重要検討ポイントの一つは「製品やサービスを理解し、顧客に伝えるべきを伝え、やるべきをやる、能力とモチベーションがあるか」です。これが上手くできなければ、進出しても適切にベトナムでの活動を評価することができず、必要に応じて次の手立てが打てません。 上記の検討ポイントは特筆するべき点であり、更に多くの検討ポイントがあり、これらの点を立体的に組み立てたうえで評価することが、ベトナムへの進出に必須となります。
市場調査や進出で困っていませんか?
ベトナム市場は多くのビジネスチャンスを提供していますが、成功するためには詳細な市場調査と戦略的な計画が不可欠です。規制や文化の違い、インフラの制約などのリスクを理解し、市場調査や進出方法の検討・選択を講じることが重要です。
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参考文献
https://www.sourceofasia.com/ma-market-in-vietnam-outlook-and-forecast-2024/
https://plf.vn/analysis-of-ma-landscape-in-vietnam-opportunities-and-emerging-trends/